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ちいさな、世界

私の頭の中の宇宙

卵を落とした

料理をしようとキッチンに生卵を置いたら転がって床に落ちた。何も考えずに適当に置いたので転がった卵のストッパーになる物が何もなかった。

どこで聞いたんだったか、卵が落ちる音というのは聞いたことがある。ドッというようなグチャッというような音だ。

人生で初めて卵を落とした。卵の落ちる音も初めて生で聞いた。実際はなんともいえない音だった。たしかに、ドッとかグチャッとかいう音に似ていたけれど、もっと鈍くて重たくて脆い印象を持った。

卵は一瞬で割れた。黄身も割れたようでゆっくりと黄色が広がった。それを見ながら、落としてしまったなぁ、片付けなきゃいけないなぁ、無駄にしてしまったなぁ…などと思った。けれど、失敗してしまったときに感じる、内臓が冷えるような、腹からゾッとするような、そういう感覚はあまりなかった。

最近は、失敗したらまずいことになるから気を付けなければ、とあらかじめ予測しなければならない。失敗したときのまずい場面を具体的に頭に思い浮かべるようにしないといけない。と思うようにしている。たとえばペットボトルの飲み物を飲むとき、車の運転をするとき。少し前の私であったら、そこまで気を付けなくても当たり前のようにできていた。

いまはダメだ。念入りに注意しなければ失敗してしまうし、失敗してもゾッとしないので反省が薄い気がする。

でも、卵を落としたときの音は当分忘れないだろう。